「そのハンカチは……?」
「肩や腕が濡れてる。髪も濡れてるんだったら、それで拭けば?」
そんなことまで、気にしてくれてんのか?
初対面なのに……。
「……ありがとう。」
戸惑いながらも傘とハンカチを受け取ると、その子は少し不機嫌そうな顔をした。
「い、言っておくけど……たまたま折りたたみ傘を持ってただけだから!こんな日は、傘ぐらい…ちゃんと持って出掛ければ?天気予報で、午後から天気が崩れるって言ってたじゃん。」
素っ気なく言うと、雨の中を駅の方へと猛スピードで走って行ってしまった。
「……………。」
今の、なんだ…?
俺に対する説教…?
いや、なんか違う。
あれ、もしかして…遠回しに“どういたしまして”って言ったんじゃないだろうか…。
そう思った瞬間、フッと笑みが零れた。