まあ、いちいち腹立てるのも面倒だから、いつもは受け流してるけど…


さすがに今のはムカついた。


ったく、女子なんてロクな奴がいない。


どいつもこいつも、嫌な女ばかりだ。


イライラしながら灰色の空を見上げた。


こうなったら、ずぶ濡れ覚悟で友達の家まで走るしかないな。


傘を貸してもらって、家に帰ろう。


そう、考えていた時だった。





「あのっ……」


少しトーンの低い女の声。


視線を落とすと、傘をさした一人の女子が立っていた。


小柄で長い髪を後ろで一つに縛ってる、その子。


また、小言でも言われて笑われるのかと思っていると、俺の目の前に折りたたみ傘と一枚のハンカチを突きつけた。




「使えば?」


素っ気ない一言。


視線は、俺を見ていない。



「貸してくれんの?俺に…?」


無言で頷く彼女。


予想外の出来事に、俺は目を見開いた。