大輝side
さのは小さい頃からの幼馴染。
幼稚園から高校までずっと一緒。
しかもなぜかクラスまでも一緒になって、腐れ縁みたいなものになっている。
昔からさのはお菓子が大好きで目がない。
よくばりだし、大食いで、甘いものばっか食べてちょっと心配になるんだけど。
まぁ、それを見てきたせいか、俺も影響を受けてお菓子が好きだ。
彼女といつもいると楽しい。
不思議と、離れられなくなってしまった。
彼女のために何かしてあげたいと、ここ最近ずっと思っている。
だから、五月に先に越されたのは悔しかった。
何よりも先にさのに喜んでほしかったのに。
五月は作り笑いの天才だ。
特に女子にはたまに冷たい態度をとる。
でもさのには、素の笑顔だったんだ。
昨日はびっくりした。
「...好きです大貴くん」
「あー...ごめんね」
今日も女の子に呼び出され、直球に告白された。
入学して何回目だろ。
最初数えていたんだけど、回を重ねるうちに忘れてしまった。
女の子って...大体は顔だよな。
俺はもともと正直だし、素直に返事をする。
「っ、ごめ...なさ」
フられた女の子は泣き始めた。
めんどくさいな。
そうすれば心変わりするとでも思っているのだろうか。
「やっぱり真城さん?...真城さんと付き合ってるから?」
そう言った彼女の言葉に目を丸くする。
なんでさのの名前が出てくるんだ。
というか、こういうこと何回言われただろうか。
仲が良い友達にも、さのと付き合っているのか聞かれたこともあった。
でも、全然そういう関係じゃない。
そう思われても仕方ないけどさ。
「さのとは付き合ってないよ、幼馴染だし」
そう言うと、女の子は小さく頷いて去っていった。
彼女には可哀想だけど、正直に返事をしてあげたから申し訳ないとかは思わない。
さのは俺とウワサされていることを知ってんのか?
いや、あいつのことだから気づいてないな。
さのは、自分が思っているよりもモテている。
「付き合ってください」なんて言われてたけど、「どこにですか?」なんて返事をしていたくらいだし。
それがあいつの素だから、悪気があて言っているわけじゃないし。
男に興味がないのかお菓子ばかりで。
「大輝、どうした変な顔して」
黙ったまま突っ立っていた俺に、後ろから五月が肩に手を回してきた。
ってか、タイミング良くない!?
今の告白されてた所を見ていたかのように、ニヤニヤしている。
きっと盗み聞きしてたな。
「見てたのかよ」
「いや、声だけ聞いてた」
それを盗み聞きっていうんだよ。
「それで?」
「それでって何だよ」
「今何考えてたんだよ」
「んー...。俺とさのって付き合ってるように見えるのかな、なんて」
そう答えてやったのに五月の顔を見ると、急にキョトンとした。
今の反応はなんだよ。
俺は肩に回された手をどける。
すると、五月は笑い始めた。
そんなに、今言った言葉が面白かったのかよ。
「気づいてなかったのか?入学した時からずっと思われてたぞ」
「え、そんな前から!?」
驚いて見せると、呆れたように五月はため息をついた。
気づいてなかったのが恥ずかしい。
「普通女子と食べ合いっこしないし、いつも一緒にいたら誰だって勘違いするだろ」
ごもっともだ。
さすが五月くん。さえた頭をお持ちのようだ。
なんだか逆にモヤモヤした気持ちになる。
みんなからそういう風に見られないためには、遊ぶ回数を減らせばいいのか?
そしたらさのに申し訳ないし、ずっと大事な存在だから。
そうだったのか、普通だったら女子といろんなことしないのか。
さのが隣にいることが当たり前だったから。
俺はちらっと教室に目を向けた。
さのが友達に何かを言われたのか、爆笑している。
それを見て、俺もつられて笑ってしまう。
「俺、昨日話してて思ってたんだけど...」
「ん、何?」
「てっきり大輝の片想いか、真城の片想いなんじゃないかなって思って見てた」
「は!?違うっつーの!」
「んだよ、嘘だから安心しろ」
嘘に全面否定したのもあれだけど、ほんとに頭が混乱する。
俺は頭をグシャグシャ乱し、ふれくされながら五月を見た。
俺をモヤモヤしてるのを見て楽しいらしい。
「キャー、五月くんだ!」
「大輝くんもいるー!」
ちょうど、俺らを見かけた女子が騒いでいる。
しかも指まで指されたら、困るし反応も出来ない。
「やっほ~」
神対応の五月は、適当に笑って手を振っている。
モテるから、もうそういう対応には慣れたのだろう。
ある意味すごいな。
俺なんて、女子見ても感情なんて湧かないし、好きって気持ちも分からない。
「真城さ、モテてるって気づかないよな」
「そういうとこ鈍いしな」
この前なんて、友達にさのが好きなんだと報告された。
別に俺に告白のアポとらなくてもいいのに。
今五月と話していても、さのと舞ちゃんを男たちが見ている。
「鈍感にもほどがある」
「しょうがない」
俺と五月は教室に入った。
するとさのは俺らに気づき、手を振った。
無邪気に笑ってるし。
今まで通り、仲良くしてもいっか。
「ね、大ちゃん聞いてよ!」
さのは笑いながら、俺のとこまで駆け寄った。
小さいのに、俺を見上げている。