Mission.N

「今度は逃げるんじゃねーぞ」

そう言った社長に、
「もう逃げませんよ」

あたしは言った。

だって、
「あたしは、社長のものですから」

心まで、あなたに囚われてしまったのだから。

「それは光栄だな」

そう言った社長の顔があたしの方へと近づいてきた。

茶色の瞳を頭の中に覚えるように、あたしは目を閉じた。

もう少し、後少し…。

「――ッ…」

社長の唇が、あたしの唇と重なった。

彼の唇は一瞬だけ触れて、すぐに離れた。

まるで初めて同士のキスのようだと、あたしは思った。