Mission.N

「夏梅」

社長が紅い顔で、あたしの名前を呼んだ。

あたしは社長の茶色の瞳を見つめる。

「本気にするぞ」

そう言った社長に、
「本気にしてください」

あたしは言い返した。

「俺は単純だぞ」

「単純で構いません」

「君が嫌だと言っても、俺は離すつもりはないぞ」

「それはお互い様です」

社長はフッと笑うと、
「夏梅」

あたしの名前を呼んだ。

「直孝」

あたしは社長の名前を呼んだ。

社長の人差し指があたしのあごに添えられて、クイッとあげさせられた。