Mission.N

「もしあたしがまだ社長のものならば、社長のことを“直孝”と名前で呼んでもいいですか?」

そう聞いたあたしに、茶色の瞳が驚いたと言うように見開かれる。

「それは、つまり…」

戸惑ったように言った社長に、
「――社長のことが、好きになってしまいました」

あたしは言った。

「――ッ…」

自分の口元を隠すように、社長はそこを手でおおった。

「参ったな…」

呟くようにそう言った後、
「それは、本当か?」

あたしに確認をするように、聞いてきた。

「はい」

あたしは首を縦に振ってうなずいた。

自分の気持ちに気づいたのは、今さっきのこと。

社長にひかれていたのは…たぶん、言い争いをしたあの日だったのかも知れない。