Mission.N

「もう2度と産業スパイをしようと思うんじゃないぞ」

そう言った社長に、
「はい、すみませんでした」

あたしは謝った。

「それから、この間はひどいことを言ってすみませんでした」

続けて言ったあたしに、
「この間って?」

社長は聞き返した。

「その…お兄ちゃんが結婚をすることになったことを話した日、です」

「ああ、そう言うことか。

気にするな」

社長は納得をしたと言うように、首を縦に振ってうなずいた。

「社長」

「まだ何かあるのか?」

あたしは深呼吸をすると、
「――社長のことを名前で呼んでいいですか?」
と、言った。