Mission.N

社長と一緒に家を出ると、
「話が終わったから電話してもいいか?」

胸ポケットからスマートフォンを取り出した社長に、
「どうぞ」

あたしは返事をした。

社長は一言二言話をした後、スマートフォンを胸ポケットに入れた。

それからあたしに視線を向けると、
「もう呼んだから入ってもいいぞ?」

そう言った社長に、あたしは首を横に振った。

「あたしも一緒に待ちます」

と言うよりも、社長に話をしたいことがあったのだ。

あたしは社長の方に向き直ると、
「今日はありがとうございました。

リップクリームのことも、産業スパイのことも、本当にありがとうございました」

躰を2つ折りにして頭を下げた。