Mission.N

カチャッと社長が置いたカップに紅茶はなかった。

「妹さんの産業スパイ行為に関しては、厳重注意と言うことで終わらせます。

今後、もう2度とこのようなことをしないと約束をしてくれるなら」

そう言った社長に、
「はい、わかりました。

ありがとうございました」

兄は深く頭を下げた。

それからあたしの方に顔を向けると、
「夏梅、今まで悪かったな」

そう言って謝った兄に、
「あたしもごめんなさい」

あたしは謝った。

「では」

社長は腰をあげると、
「夜分遅くに失礼しました」

頭を下げると、玄関の方へと足を向かわせた。

「あっ、送ります」

あたしは社長の後を追うように、玄関へと足を向かわせた。