顔を紅くしながら話をしている社長は、恋を知ったばかりの純情な少年のようだった。

その素朴な一面に、あたしの心臓がドキッと鳴ったのがわかった。

「実を言うと、社長室にはちょっとした隠し部屋があるんだ。

あの日はそこで少しだけ仮眠をしていた。

そしたら社長室に君が入ってきて、いつものように仕事を始めたんだ」

「隠し部屋、ですか…」

知らなかった…。

驚いたその反面、あたしは納得をした。

確かに、カギが閉まった密室の社長室に彼が現れたのも首を縦に振ってうなずける。

「後は…そう言うことになったと言う訳だよ」

社長は話を終わらせると、また紅茶を口に含んだ。

またあたしたち3人の間に沈黙が流れた。