Mission.N

これは一体、何なのだろうか?

それどころか、社長に嫌悪感を抱いていない自分に気づいた。

むしろ、社長に好意すら抱いているような気がする…。

「まさか、ね…」

あたしは首を横に振って、胸の中にある気持ちを否定した。

社長は社長だ。

あたしは秘書だ。

彼はあたしの上司で、あたしは彼の部下だ。

それよりも、
「社長はいつから、あたしが産業スパイだってことに気づいたのかしら…?」

あたしは呟いた後、社長室の前から立ち去った。

調べた当初は、あたしの正体に気づかなかったと言っていた。

正体に気づいたのは…本当に、いつからだったのだろう?

そう思いながら、あたしは秘書課へと足を向かわせた。