Mission.N

「夏梅」

その声に、あたしはハッと我に返った。

あたしの目の前には社長がいた。

キョロキョロと首を動かして周りを見回すと、あたしが今いる場所は社長室だった。

そうだ…。

今は仕事の最中だった。

「今日の予定を聞きたいんだけど」

そう話しかけてきた社長に、
「はい、ただいま」

手帳を広げようとしたら、あたしの手から手帳が滑り落ちた。

「あっ…」

そう思った時には、すでに遅かった。

バサッと、手帳が広がった状態でじゅうたんのうえに落ちた。

社長はあたしと落ちた手帳を見た後、長身の躰をかがんだ。

「はい」

手帳があたしの前に差し出された。