あたしは息を吐いた。

「――なっ、何なのよ…」

躰が震えているせいで、どうすることもできない。

とっくにって言っていたけど、いつから気づいてたの?

と言うか、
「どこから現れたんだ?」

キョロキョロと首を動かして社長室を見回す。

出入りが許されているのはドアだけ、そのドアにはカギをかけたはずだ。

あたしが現れるまで隠れて待っていたにしろ何にしろ、一体どこから現れたって言うんだ?

そう思いながら、手の中にあるUSBメモリーを見つめた。

「最悪なことになったな…」

呟いた後、先ほどの悔しさをぶつけるように唇を強く噛んだ。

口の中に広がった鉄の味に、あたしはUSBメモリーを強く握りしめた。