あたしは手の中にあるUSBメモリーを見つめた。

今回だけは見逃してやる、と言うことなのか?

社長にそう聞くために、あたしは口を開こうとした。

「俺のものになってくれるって言うなら、考えてやらないまでもないよ?」

口を開く前に、社長が言った。

「俺のものになるって言うならば、見逃してあげる。

プラス、藍田くんの今後の行動にも口を出さない。

ただし嫌だと言ったら、最悪なことになるよ?」

首を縦に振ったら、社長に弱みを握られたままの状態で秘書を続けなければいけない。

早い話が奴隷だ。

だけど首を横に振ったら、あたしが今まで築きあげてきたものが全て崩れ落ちる。

そうなったら、“あの人”も巻き込んでしまう…。