「それでね、お花がたくさん咲いているところを見つけたの。そこで綺麗な花を探した。そんな時にね、後ろから声がしたんだ。『何してるの?』って。ビックリして振り返ったら、男の子が立ってた。なんか、不思議な子だったんだよね。上手く言えないけど、どこか変わってるっていうか」


上手く言えなくてもどかしそうにている翡翠に、「なんとなく想像してみるよ」と私は話を進めるように促した。

翡翠はそんな私の言葉に微笑んで、続けた。


「『お母さんにお花をあげるの』って、私は返事をした。そしたらね、『君のお母さん、摘んだお花をあげて喜ぶかなぁ』って、男の子が怪訝そうな顔をしたの」


聞いていて、今のところその男の子にあまりいい印象を抱かない。

そんな私の心情を読み取ったのか、「私もそう言われてちょっとムッとした」と翡翠は笑った。


「『こんなに綺麗なんだから、喜ぶに決まってる』って返したら、『確かに綺麗だね』って男の子は花を見た。なんとなくその表情が、冷めて見えたんだよね。男の子は、花から私に視線を移して言ったんだ。『こんなに綺麗なんだから、摘んじゃったら可哀想じゃない?』って」

「可哀想?」

「うん。私もはじめは意味が分からなかった。『どういう意味?』って聞いたの。そしたら、『お花は摘まれたら、痛いし、死んじゃうんじゃないかな』って言われた」


随分とませてるというか、大人びているというか。
言葉は子どもっぽいけど、言っている内容は冷静で、それでいて納得させられる。