世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-

次の日、私は三冊の本を持って学校に来た。

重かったけど、その重さは心の何処かの温かさに比例しているようで、嫌ではなかった。


「はい、翡翠」

「わぁっ、ありがとう!読んだらすぐ返すね」

「うん。焦って読まなくても、返すのはいつでもいいよ」


翡翠の次は青柳颯太。


「はい」

「ん、サンキュ。『天体観測』?」

「うん。まだ見ぬ世界に思いを馳せる少年の話。世界観とか綺麗で気に入ってるの。宇宙とかに興味なくても多分楽しめるはず」

「...へぇ、読んでみる」


青柳颯太は本の表紙を数秒見つめ、本を開いた。


次は、坂瀬くん。

人に囲まれている坂瀬くんには、やっぱり近づきにくい。
でも、坂瀬くんはいつだって自分から来てくれてた。


「あ、遊佐さん!」


それは、今日も相変わらずで。


「これ、貸したいと思ってた本なんだ」

「俺も遊佐さんに読んでほしい本、持ってきてるよ」


私達は本を交換し合う。


「『colorful・colorful』っていうんだ?」

「うん。世界が彩られていく感じがして、すごく好きなの」

「...そっか。ありがとう。読んだらすぐ感想言うから」


坂瀬くんは優しく微笑んで、私の本を見ていた。


「坂瀬くんの本は、『claimer』っていうんだね」

「そう!世界の間違ってることについて大声で反論して世界を変えようとする一人の男の話。正義とか悪とか、色々考えさせられるからすっげぇ気に入ったんだ」


生き生きと話す坂瀬くん。
坂瀬くんが楽しそうに話してくれて、私もすごく嬉しかった。
坂瀬くんの本心に、触れられたような気がしたから。


「面白そう。読むのが楽しみ」


私がそう言うと、坂瀬くんは嬉しそうに頷いてくれた。

やっぱり坂瀬くんと話すと、すごく穏やかな気分になる。

また話せるようになって、本当によかったと思った。