世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-

「その女の子は、何を見ても涙を浮かべる。それで、自分は穢れてるって思うんだ。でも、遊佐さんが言ってた。女の子は綺麗すぎるんだって。だからこんな考え方をしてしまうんだろうって」


坂瀬くんはそう言って私を見た。

私は、小さく頷いた。


「俺、この小説に出てくる女の子が見てる景色が見てみたいって思ったんだ。涙が零れるくらい綺麗な景色を」


優しい表情で、その本のことを話す坂瀬くん。

本当に、興味がない?
こんなにも優しい表情で、楽しそうに話してるのに?
本当に、一方的に私が押し付けてる?

私は青柳颯太の方をちらと見た。

青柳颯太は微笑んで、私を見て小さく頷いた。
そして、申し訳なさそうな表情をして見せた。

あぁ、分かったよ。

理由は分からないけど、分かった。

坂瀬くんは、興味を持ってくれてる。
一方的に押し付けてた訳じゃない。
きっと、楽しんでくれてた。


「私も、この女の子が見てるような景色が見てみたかったんだ。女の子みたいに純粋で、穢れがなくて...そんな人になりたいなって」


私の言葉に、坂瀬くんは嬉しそうに笑った。

誤解は解けた。
きっと、元通り。