ようやく坂瀬くんの元に辿り着いて、私は坂瀬くんの服の袖を思いきり引っ張った。

その拍子に私達は歩道に倒れ込み、その後すぐに、坂瀬くんがいた場所を車が走って行った。


「遊佐、さん...?」

「何、してんの...っ」


声を出すも、途切れ途切れ。
息が上がって、肺が痛くて、苦しい。

坂瀬くんはそんな私を不思議そうに見て、首を傾げる。

どうしてそんな表情をしているのか、と少し苛立つ気持ちを押し込んで、私は続けた。


「信号、赤だよ...?」


途切れ途切れの私の言葉を聞いて、坂瀬くんは信号を見る。


「...あぁ、ほんとだ」


でも、その言葉は何を見るでもなく、ただ宙をボーっと見つめて言った。


「...まさか、死のうとしたとかじゃないよね?」


私の言葉に、坂瀬くんは驚いた表情をして、私を見た。

そして、笑いだした。


「そんなわけないじゃん。俺にそんな勇気ないって。ただ...ただ、光が眩しくて、見えなかっただけ」


...そんなはずない。
空は雲が覆い尽くしていて曇り、光なんて見えないから。