それから休憩が終わるギリギリに翡翠が返ってきて、「どうだった?」と期待に満ちた表情で聞いてきた。


「別に、どうしたも何も...」


本を借りただけ、だけど。

そう言うと、翡翠は「うーん」と悩む。


「え、なになに、何に悩んでんの」

「いやぁ、日和ちゃんに春が巡ってきたのかなぁって応援してたんだけど...」

「春?いや、私別に坂瀬くんに恋してるわけじゃないよ」

「えぇー、残念」


翡翠は困ったように笑った。
翡翠は本当に女子らしい子だ。
女子はこういう話が好きだから。


「でも、坂瀬くんっていい人だよね、多分」


翡翠がそう言って、席について友達に囲まれている坂瀬くんを見ながら言った。