「ねぇねぇ、知ってた?」


授業の合間の休憩中に、梨沙が声をかけてきた。
梨沙は私の隣の席の女子で、坂瀬くんについてのメモを回していた子。


「知ってたって何が?」


私がそう聞くと、梨沙はふふん、と自慢げな表情をして、言った。


「坂瀬くんはねー、星がモチーフにされてるものが好きなんだと思うよ!」

「星?」

「うん!この前小さい星形のものを眺めてたの見たよ。ビーズ、見たいな?」

「へぇー」

「あれ、反応薄いね!?」


梨沙はショック、というような表情をする。


「え、いや、どんな反応を求めてたの。っていうか、なんでそんなことを私に?」


私は驚愕の表情を浮かべる梨沙に返す。


「いや、ひよちゃんって坂瀬くんのこと好きなのかなーと、思ってたからさ。坂瀬くんの情報をあげようと思って」

「いや、別に好きな訳じゃ」

「えー、だってさっきもずっと坂瀬くんのこと見てたじゃん」


完全に私が坂瀬くんに恋をしていると思われている。


「それに、星をモチーフにしたものを持ってたからといって別に星が好きな訳じゃないかもしれないし」

「でも、特別って感じだったよ?大事そうに持ってたし」

「それに、その星をモチーフにしたものが何かも分かんないんでしょ?」

「うん。それは分かんない。ビーズみたいな、飴みたいな?」


曖昧なその返事に、私は適当に相槌をうった。


「あ、あと、多分甘いものも好きだよ!クッキーとかチョコとか!」

「へぇー」

「もう、リアクション薄いー」

「だから坂瀬くんのことが好きな訳じゃないんだもん」


わざとらしく項垂れる梨沙に「もう授業始まるよ」と一言声をかけ、私は寝る体制に入った。