それから色々な屋台を回った。

ヨーヨー釣りでは何度も失敗して、坂瀬くんは「もう一回」、「あと一回」ときりがなくて、「そろそろやめよ?」と私が言うまで終わらなかった。

スーパーボール掬いもあんまり上手く行かなくて、やっととれた一個のボールを私にくれた。
そのボールはキラキラしていて、この歳でもなぜかわくわくした。

多分、気持ちが小さな子どもに戻ったんだと思う。


「あぁー、お腹空いた。遊佐さん、なんか食べに行こうよ」

「えっ?」

「何が食べたい?一緒に食べよ」


自然にそう言う坂瀬くん。

私は戸惑ったまま、坂瀬くんの後を着いていった。

私がリクエストをしたのは綿菓子。
坂瀬くんは綿菓子、林檎飴、焼きそば、唐揚げと食べきれるのか心配なほどたくさん買って、私を海辺まで連れてきてくれた。


「ここで食べよう」

「う、うん...」


階段状になっている場所に私達は隣り合って座った。


「これ全部、遊佐さんも食べていいからね」

「あっ、私お金払ってない...」

「いいっていいって、食べよ?」


それはダメだよ、と話を続けようとしたけど、坂瀬くんの意識はもう焼きそばにまっしぐら。
笑ってしまい、私は坂瀬くんに甘えておくことにした。


「んー!美味しい!焼きそば旨いよ、遊佐さんも食べてみて」

「この唐揚げも旨いよ!遊佐さんどうぞ」


次々と差し出してくる坂瀬くんに「待って待って」と言うと、「あ、俺急かし過ぎちゃったね」と笑った。

お祭りなんて久々だけど、こんなに楽しいお祭りは初めてかもしれない。


「綿菓子も食べよ」

「うん」


坂瀬くんが綿菓子の袋をとって、大きな雲が目の前に現れる。

坂瀬くんはその綿菓子を指で取り、口に運んだ。


「甘い、旨い!」


私も坂瀬くんがしたようにして綿菓子を取り、口に運ぶ。


「美味しい!」

「やっぱ祭りと言えば綿菓子かな?」


そう言いながら坂瀬くんは笑った。
その笑みはふわりとしていて、目の前の綿菓子を思わせた。