世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-

「坂瀬くん」

「あっ、遊佐さん!見て見て、俺これ一発で取れた!」


子どものようにはしゃぐ坂瀬くんの手には、ピンクの可愛いうさぎのぬいぐるみ。


「これ、遊佐さんに似てる気がしてさ。はい、あげるよ」


坂瀬くんはそう言って私にうさぎのぬいぐるみを差し出した。


「えっ、いいの?せっかく取れたのに...」

「いいよいいよ、遊佐さんにあげようと思って取ったんだし」


無邪気に紡がれるその言葉に、私の頬がじわじわと赤く染まっていくのが分かる。
坂瀬くんは深い意味はないんだろうけど、私にとっては嬉しくて、顔が真っ赤になるには充分なこと。


「遊佐さん、ほかの屋台も回ろう!」


そう言って坂瀬くんは私の手をとって、駆けていく。

前は歩幅を合わせて歩いていた。
でも今日は、少し強引で、子どもみたいにはしゃいでて。

それが少しおかしくて、楽しい。

握られた手にドキドキしながら、私は坂瀬くんに手を引かれて小走りで横に並んだ。