教室までの帰り道。
長い廊下で、私は考える。

あんなにも綺麗な絵を描ける翡翠。
それは、きっと本気で絵を描くことが好きだから。

それに比べて、私は写真を撮ることが好きなわけではない。
周りの評価に流されて、何となくシャッターをきる。
その一つ一つの良さが、私には感じられない。

もし、翡翠が絵を描くのが好きなように、私も本当に写真を撮ることが好きになれたら、私も納得できる写真を撮れるようになるんだろうか。

日和は過去の出来事によって、絵を描くようになった。
一方私は何となく写真部を選んで入っただけ。

私にも、そんな出来事が起これば、あんな風になれるだろうか。

真っ直ぐに写真を撮ることを、楽しめるようになるだろうか。


「日和ちゃん」


後ろから翡翠が呼びかけてくる。


「何?」


私が聞くと、翡翠は小走りで私の横に並ぶ。


「日和ちゃんは、写真を撮るの、好き?」


まるで今までの私の声が聞こえていたような質問だ。


「突然どうしたの?」

「なんか、聞いてみたくて」

「そっか。うーん、そうだなぁ...。あんまり、好きじゃないかも」

「そっかぁ」


翡翠は頷いて、私の方を見て微笑む。


「私ね、日和ちゃんの写真、好きだよ。でもね、写真を撮ることが好きになったら、きっともっと日和ちゃんらしい写真になると思うんだ」

「私らしい?」

「うん。ありきたりな言葉だし、偉そうに言えることじゃないとは思うんだけど、なんか、思ったから言ってみた。私も絵を描くことが好きになってから、だんだん自分の作品が好きになっていったんだ。でも、好きになっていくだけじゃない。もっと、もっとって、簡単には満足しなくなって、満足するように模索していくとね、いつの間にかすごく楽しくなるんだよ」


いつになく饒舌で熱が入っている翡翠を見て、私のことを思って言ってくれているのが分かる。

私も、そうなれる日が来るんだろうか。
翡翠みたいに、向上心を持って、自分の作品に誇りを持てる日が。