ドッシャアアンとすさまじい音をたてて崩落したそれは、ヒナが飛び込んだ入口をいとも簡単に押しつぶす。

カラカラに乾いた口内には
彼女の名前の切れ端が空しく引っかかったまま


「離れてろ、あんたも!」


突き飛ばされるようにして火の海から無理矢理遠ざけられた。



何だ

何だ

何だ、これは。



脳は考える事を放棄し
耳は音を拾う事を諦めたみたいだ。

悲しいかな目だけは正常に機能し、この惨状をしっかりと捕らえている。


熱風のせいか両頬がヒリヒリと痛い。


夢への一歩となるはずだった個展会場を養分に膨らみ続ける炎は
俺から、未来とあいつを奪っていく。