スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

深夜の大火事に駆けつけた消防隊員とマスコミ。
それから野次馬で周辺はごった返していた。


「ウソだろ……」


どす黒く昇る黒煙が、春木さんの夢を丸ごと飲み込む龍に見えた。


「春木くん!!!」


人混みに紛れながらこちらに駆けてきたオーナーは、土下座しそうな勢いで何度も何度も頭を下げた。


「すまない。春木くん、すまない!!」

「どうなってんすか」

「どうも漏電らしい……!」


泣いているのだろう。
オーナーの肩ががたがたと震えている。


「漏電て……新築だったんじゃ」

「こちらの施工ミスだ。何てお詫びしたらいいか……!!」


たぶんオーナーのせいじゃないんだろう。
それにこうなってしまった今、責任の所在がどこにあるかなんてちっぽけな問題に過ぎない。


でも、そんな言葉を彼にかける余裕は私達になかった。


ただ呆然と
無惨に炭になっていく会場を見ている事しかできなかった。