「え?どこ行くんですか?」
「いいから。ちょっと来い」
いつになく弾んだ声の春木さんに手を引かれ、会場内の一室に入る。
電気が全て消された真っ暗な部屋だ。
一歩足を踏み入れた途端、壁と天井一面に無数の写真が浮かび上がった。
「あ!」
スライドで映し出された大小様々な大きさの写真は、次々に入れ変わっていく。
部屋全体がスクリーンになっていていつまで見ていても飽きない。
瞬きさえもったいない。
この前事務所から持ってきた、春木さんの過去の作品たちに間違いなかった。
幻想的なその光景に、思わずため息が零れる。
「すげぇだろ?」
「魔法みたい……」
「そう言うと思った。」
暗闇に慣れ始めた目が、ぼんやり春木さんを捕らえた。
「あんたに一番先に見せたかったんだ。絶対喜ぶだろうなって」
胸が、ことりと音をたてて動いた。
春木さんの優しさが嬉しいのに、苦しいのはなぜだろう。
泣きたくなるのはなぜだろう?

