スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

「あ、やべ。ちょっと急ごう」


春木さんが腕時計を確認しながら言った。


実はこの後、事務所でカメラ雑誌の取材が入っているのだ。


満を持しての春木リョウの個展開催は、業界内で当然話題になっていた。

私でも知っているような有名なカメラ雑誌から春木さんの特集を組むのでインタビューさせてほしいと数日前に依頼があった。


「あの……私も見学していいですか?」


おずおずと春木さんに問いかける。


態度にこそ出ていないが、先日の失言を水に流してもらえたとは思えない。
図々しいだろうか?
体が勝手に緊張する。

立ち止まった春木さんは、ちらりと私を見た。


「好きにすれば。」