スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

「うん。これでいこう」


オーナーは図面を確かめながらそう言った。
春木さんと私は立派なテーブルを挟んだこちら側に並んで座り、彼と向かい合っている。


「大変だったろう、春木くん。仕事もあるのに短期間でよく仕上げてきたね」

「ええ。いい加減にやると罵詈雑言を浴びせてくる奴がいますので」


春木さんはさらりと言った。私は慌てて咳払いをする。


「何だって?」

「いえ。こっちの話です」


そうかい、と笑って
オーナーはパソコンを操作した。


「この図面だと、こんな感じになるかな。」


ディスプレイ上に現れたのは会場の立体図だった。
提出した図面通りに四角いマークが並んでいる。
実際にはこのマークの場所に写真が展示される訳だ。


マウスがクリックされる度に部屋が変わり、細部までイメージしやすいものになっていた。
春木さんもおぉ、と嬉しそうに声をあげる。


「こうやって見ると、メインの部屋は大パネル六枚じゃ寂しいですね」

「そうだね。もうちょっと増やしても良いかもしれない」


個展まで、あと1ヶ月。
私たちは膝を突き合わせて案を出し合った。