スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

翌日、春木さんは朝から事務所隣の物置兼現像室にこもりっぱなしだった。
撮り溜めた写真を現像し、加工するためだ。

この作業が始まると私は現像室へは立入禁止になる。
少しでも光が入るとフィルムに影が入り、写真が台無しになってしまうから。


昨日の一件を謝罪するタイミングも無いまま
私は自分の仕事に取りかからなくてはいけなかった。



夕方、用事を済ませ帰社した時
自分のデスクに大きな紙が乗っているのに気が付いた。


「あ、」


それは、綺麗に直された個展会場のレイアウト図だった。


『明日コレ持って会場に直接集合。』


そう書かれた春木さんのメモが付いている。


「わぁ……」


自分の頭の中に、ぶわっとイメージが流れ込んでくる。

この通りに飾られた春木さんの写真……

想像はぐんぐん広がって、意識の全てを乗っ取っていく。

靄がかかっていた気持ちがすっきりと晴れ渡るのを感じた。



さすが春木さんだ。

完璧に作られた図面を前に、自然と頬が緩んだ。