スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

事務所に戻りパソコンの前で事務仕事を片付けていると
ガチャリ、と扉が開いた。


「お疲れさまです」

「んー」


単独の撮影から戻ってきた春木さんが、ソファにどっかり座り込んだ。


「進んだ?打ち合わせ」

「はい、それなりに。次は春木さんも同席してほしいそうです」

「……ハハ。だよね」


春木さんはカメラも鞄も肩にかけたまま横になる。


「お茶煎れますか?」

「いいよ、お前もう帰れ。終電…無くなるから……」


むにゃむにゃとした口調で私にそう言うと、春木さんは目を閉じた。


「今日も事務所に泊まるんですか?」

「……」

「春木さん」


眠りに落ちてしまった彼を起こさないように、そっと鞄とカメラを外す。


春木さんの目の下にはうっすら隈が浮かんでいた。
このところ事務所に泊まり込みで、朝も夜もなく仕事をしているからだろう。

そのスケジュールの詰め方は異常な程だ。
個展の準備と並行してこなせる量では到底無かった。


私には
ただがむしゃらに仕事をやっつけているようにしか見えなかった。