正直に言うと、春木さんはこの仕事を断ると思っていた。


事務所の壁に掛かっているカレンダー式のホワイトボードにびっしりと書き込まれたスケジュール。
加えて個展の準備も進む中、新しい仕事を引き受ける余裕はどう考えても無いはずだった。


でも私は今、ひとり地下鉄に揺られ撮影スタジオに向かっている。


『西澤カレンFB撮影』


そうホワイトボードに書き込む春木さんの横顔を
ぼんやりと思い出しながら。