パソコンの画面ばかり見ていた私は
春木さんの表情が一瞬で凍りついた事に気付けなかった。


「つきましては○×プロダクション所属タレント、西澤カレンさんのフォトブック撮影を貴殿に依頼したく……」


メールを最後まで読み上げ、添付されているファイルを開く。
そこには少し前までテレビでよく見かけていたハーフタレントの女性が笑顔で映っていた。


「わー、綺麗な人……そっか、最近見ないと思ったらお子さんが産まれるんですね。返信どうしたらいいですか?」


そう言ってソファに目を移すと
春木さんはレンズを手に持ったまま硬直していた。


「春木さん?」


私の問いかけには答えようとせず、パソコンの画面に吸い寄せられるようにこちらへやってくる。


「……」


西澤さんの写真を無言で見つめる春木さんが醸し出す空気は、明らかにいつもと違っていた。


彼が今、何を思うかなんて
私には知る由もなかった。