それから私たちは早速個展の準備に着手した。

春木さんは撮影の合間を縫って写真の選別から加工、会場全体のレイアウトの構想も練らなければならない。

私も個展に関する細々とした事務仕事が増え、撮影が無い日は毎日パソコンと睨めっこの日々が続いた。


「あれ、」


膨大な数の打ち合わせメールに紛れて一通のメールが届いていた。


「春木さん。お仕事の依頼です」


ソファでレンズを磨いている春木さんに声をかける。
差出人は都内の有名な出版社だ。


「えーと、タレント本の撮影みたいですね」

「ふーん。」


さして興味もなさそうな春木さんを横目に、文面を読みあげる。


「本のタイトルは…『西澤カレンのハッピーマタニティライフ』。」