スタジオに戻るとすぐ撮影の準備が始まった。

白いスクリーンの前でイスに座り、矢吹さんにグロスを塗り直してもらう。

芸能人からも指名が多々あるという矢吹さんの手腕は凄まじく、メイクとヘアセットを終え鏡に映った自分は人生で一番華やかな外見に変身していた。


「あの、」

「あー!もうちょっとだから喋らないで!」

「ハイ……」


モデルさんの代役をやってほしいと頼まれたのは、控え室で着ていた服を半ば強引に脱がされた後だ。

返事をする暇もなくどんどん支度は進み、気が付いたらこうなっていた。


でも、本当に私でいいんだろうか?
当然未経験だし、しかも春木さんに撮られるなんて……

こわばった喉がこくり、と動く。


「緊張してるの?」


矢吹さんに尋ねられ、小さく頷いた。