自分の口から出た素直な気持ちに、一番驚いたのは自分自身だった。

今、何を言ったんだ?

爆発的な羞恥心が一拍遅れてやってくる。


「え……」

「何でもない。戻るぞ」


冷めない熱を引きずりながら、再び彼女の手を取りスタジオへと引き返す。

今度は意識的に歩むスピードを落とした。追いついたヒナが隣に並ぶ。


「春木さん」

「ん?」

「さっきの、もう一回言ってください」

「やだよ」


軽く睨みつけてもヒナは全く怯む事なくへらり、と笑った。



「……へへ。」



いつも以上に頬が上気しているように見えるのは、これも化粧の効果なのか。


隠す気のない照れ笑いに、胸がじんわりあたたかくなって



……あぁ、もう
何なんだ、これは。



彼女の仕草に、甘い匂いに。
芯の強さに、ぶれる事ない優しさに。


いつのまにやら捕らわれて、もう戻れないところまで来てしまった。