スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

トントン拍子に話は進み、本当にヒナがモデルの代役を務める事になってしまった。

この事態は1ミリも予想していなかった。
撮り方まで考え直さなければならない。


ヒナの支度が整うまでの待ち時間を利用してイメージを膨らませる。


ドレスを着たヒナは、どういう風に撮れば一番輝くか。

ドレスを着たヒナ。

ドレスを……?



「だめだ。想像できない」



愛用のスケッチブックを閉じ、深くため息を吐いた。

あの童顔を毎日見ているからか、矢吹さんの言う『大人っぽくてセクシーな女性』になってドレスを身に纏っているヒナの姿が浮かんでこない。

まるで子どもの頃に読んだファンタジーのように、非現実的な世界に思えた。


もちろん俺が惚れたのはそのままのヒナな訳だが、それとこれとは話が別だ。


「あのー」


座ったまま声をかけると、社員の男性はハイ、と俺を見た。



「本当にあいつがモデルでいいんですか?ただのアシスタントですよ?」

「ええ。それはわかってますけど、スケジュール的にも厳しいものがありまして」

「業界内にもお客さんにも配られるカタログなんでしょ?」

「プロのメイクさんがいけるっておっしゃってるんだから、大丈夫なんじゃないですか?」


中身のない会話をうだうだと続けていると、控え室のドアが開いた。