一條さんから貰った合い鍵で事務所の扉を開け、文字通り中に飛び込むと
ソファに座っていた春木さんは、磨きかけのレンズを手に持ったまま振り返った。



「お前……なんで」



半月ぶりに再会した彼は、驚愕の表情を浮かべて固まっている。


「熱は?」

「下がりました」

「そう、か」


私が乱れた呼吸を整えている間も、春木さんがこちらを見つめ唖然としているのがわかった。


電気の付いていない薄暗い事務所の中。
顔を上げると、互いの視線がぶつかった。