ようやく成田空港に降り立った時には、もう昼が近かった。

預けていた荷物を受け取った後、雑踏をくぐり抜け壁際で電話をかける。


『おかけになった電話は電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため…』


事務的なアナウンスが耳に届く。
舌打ちをして通話を切った。


「何やってんだよ……」


携帯をポケットに押し込み、出口に向かって歩き出す。




数日前の真夜中、突然電話があった時
ヒナの声はハッキリと震えていた。


何かあったのかと聞いても、切羽詰まった様子で一方的に電話を切られてしまった。

その後、何度かけ直しても彼女に繋がらない。


『声聞けて良かったです。安心しました』


彼女がそう言った理由は見当もつかない。

だが、妙な胸騒ぎがしていた。