部屋に射し込む西日のせいだろうか。

私に向き直った春木さんの表情が
びっくりするほど優しく見えた。


「へ……」


予想外すぎる言葉のせいでしばらく思考が停止してしまう。
その間に春木さんはゴソゴソと自分のデスクの引き出しを漁り、何か紙切れを取り出した。


「ん。」


目の前に突きつけられた一枚のメモをおそるおそる手に取る。


「その印刷会社に電話して自分の名刺発注しとけ。」

「名刺?」

「これから必要だろ?アシスタントなんだから。」


顔を上げると春木さんも私を見ていた。
今度は、いつもの少し意地悪そうな笑顔で。


「……はい!」


緩んでいく頬も高ぶる気持ちも、自分では抑えようがなかった。

この瞬間を思い出せば
どんな事でも乗り越えていけそうな気がした。