スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

「え?コレ?」


その男は、俺の作ったポスターを見て眉根を寄せた。

先月依頼された、街のPRポスターの納入日だった。
事務所に受け取りにきたのは前回もいた男と、町長だという恰幅の良い白髪頭の男の二人だ。


「なーんか。思ったほどじゃないねぇ」


町長はポスターの出来に難色を示している。
無礼な物言いにカチンときたが、表情には出さない。


「全体的に色合いが地味じゃない?」

「そうですか。こっちの案はどうですか」


俺の声に合わせ、ヒナが別の写真を使ったポスターを二人の前に提示した。


「んー?」

「こっちの方が良いんじゃないですか?町長」

「俺はどっちも気に入らないな。」


副町長のフォローも虚しくきっぱりと否定され、心の中だけで舌打ちをかます。
ヒナが俺にしか見えない角度で顔をしかめた。


「こんな雪原に温泉の写真じゃありきたりだろう?パッと目を引くポスターにしてほしいんだ」

「すみません。やり直します」

「こっちは高い金払ってるんだからさ。良いもの作ってよ」


威圧的な態度でそう言われた。一瞬我を忘れそうになる。
いちいち癪に障る男だ。

こみ上げる悔しさを隠し、事務所を出る二人を見送った。