スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜

何も言い返す事が出来なかった。

岳は黙って俺の反応を待っている。
胸の内を見透かされているような気がして、


「……そうだな。」


一方的に電話を切った。




開店前のイタリアンレストランの壁に背中を付け、ゆっくりとしゃがみこむ。

大理石で造られたそれは、外気に晒され冷えきっていた。


「何なんだよ……」


零れるため息を、独り言でごまかした。



岳の言う通り、俺は部外者だ。



自分でも理由のわからない焦燥感に突き動かされ、岳に電話をかけてしまった。



全てがどうでもいい人間のはずだったのに
いつからこんなに感情的になったんだろう?