「町のPRポスター?」


東京に幾度目かの雪が降った朝、事務所に突然仕事の依頼が持ち込まれた。
春木さんが企画書を覗き込む。


「えぇ。ぜひ春木さんにお願いしたくてですね」


テーブルの向こうで媚びるような声を出すのは、東京近郊に位置する小さな町の副町長らしい。


「最近町長が変わりまして、うちも観光客の誘致に力を入れようと思ってるんです。都心のような派手さはないですけど、東京にしては多い自然がアピールポイントかなと」

「なるほど。でも今冬ですけどね」

「何もない、という景色こそ撮って頂きたいんです。この辺りじゃそういうのが貴重じゃないですか。あ、温泉なんかはありますよ。都会暮らしに疲れた人間がちょっと足を伸ばして癒されにやってくる……そんな町に思えるようなポスターを作って欲しいんです」