雨が降っている。


私はその土砂降りの中を1人で走っていた。


まるで私の感情を表しているかの様な酷く冷たく激しい雨だ。


こんなことって――



なにも考えていない時にすぐ思い出してしまう。


目の前に血を流している両親、そして兄の姿。

「早くっ!早く逃げろ!」


その先には黒い服の人が立っていて、その人が手をかざすと、みんな動かなくなった。


みんな、アイツの魔法に殺されたんだ。


私は、その場から逃げて、逃げて、そしてここに着いた。


もう、どれだけ走ったかわからない。



走って走って、走り疲れて、何かにつまづいてその場に倒れる。


地面は雨で濡れてて、服も肌も汚れたに違いない。


でも自力で立ち上がる様な気力ももう残っていなかった。


それにここがどこなのかわからない。


なにも持ってないし、なんの魔法も使えない。


どうすればいいの?



誰か……助けて……。





「あれ?君、どうしたの?大丈夫?」


薄れていく意識の中でそんな声が聞こえた気がした。