「勇生、おはよー」


「おはよーじゃねぇよ。
ったく、また朝練サボりやがったな」


「だって、ねみぃんだもん」


朝練終わって着替えている途中に眠そうに来たのは、オレの幼なじみ。


秋本 大樹(あきもと たいき)


「お前、試合が近いのに朝練サボるなんて、いい度胸してんな?」


「だって、どうせ3年生がメインなんだから出られるわけないっしょ」

不貞腐れるように大樹が言う。

確かにそう思うのも仕方がない。


でも、そんなもったいないことをさせてたまるか。


「ふーん、まぁお前がそう思っているなら別にいいけど。
今度の試合、るなが来るのに……」


「えっ!?お前、今なんて…!」


よし、食いついた。


冬木 るな(ふゆき るな)

オレらのクラスの委員長。

そして、大樹が恋している相手でもある。


「だーかーらー、るなが今度の試合を観に来るんだって!」


「マジか……よっしゃあ!」


さっきまで眠そうにしていたのが嘘みたいに、大樹のテンションが一気に上がった。

でも、一応もう少しだけ追い討ちをかけて……


「まぁ、誰かさんには関係ない話か。
朝練サボるし。
ましてや出られるわけないとか言ってんだから」


「え、ごめんなさい!
明日から真面目に来るから!
るなには言わないで」


「本当だな?」


「おう!」


「言ったからな?」


「言った!本当に来るから!」


よし、成功!


大樹とは5年の付き合いだからな。

多少の扱いには慣れてる。


「ってか勇生。お前、やっぱり顔色悪いぞ?」


「あー、今朝からちょっとダルいんだよ。
……って、やっぱり?」


「おぉ、さっきこっち来る前に笑美ちゃんに会って、お前が体調悪いみたいだから無理しないように見ててほしいって頼まれたんだよ」


笑美が……


今朝の笑美の顔を思い出して、ふいに頬が緩んだ。


本当に心配性だな。


小さい頃から変わらないよな。あの瞳……


「大丈夫か?保健室行く?」


「バーカ!
1時間目の体育、サッカーだろ?」


「だよな!」


オレがサッカーをしないはずないじゃん。


自分の体よりも、サッカーの方が大事なんだ。