「勇生兄ちゃん!」
「おぉ優人!」
こいつ、病気とは思えないほど元気だよな・・・
でも今日は、点滴スタンドも一緒だ。
「優人、それって・・・」
「さっき、針を入れたんだ。
じっとしとけって言われたけど、暇だから来ちゃった!」
「そっか・・・頑張れよ」
いよいよ優人もか・・・
「ねぇ、副作用ってどんな感じなの?」
「ん~とにかく、吐き気が強いんだ。
あとは髪が抜けて・・・」
「僕、ハゲになっちゃうの?」
「大丈夫。ちょっと我慢すれば、先生たちにいっぱい褒められるぞ」
少しでも、優人の不安を和らげないと。
まだ小3のこいつには、辛すぎるからな。
「そっか・・・勇生兄ちゃんはそれを2回も頑張ったんだね」
「まぁな!」
昼前になったから、そろそろ帰らせるか。
「優人、そろそろ・・・」
優人の顔が、こわばった。
「優人?」
「うっ、うぇ・・・」
「優人!」
その場にうずくまって戻す優人。
「苦しいよ・・・勇生兄・・・うぇっ」
完全にパニックに陥ってしまっている。
「優人、そろそろご飯・・・優人!?」
「紫乃ちゃん!」
「優人、どうしたの?
えっ・・・どうしょう・・・!」
ダメだ、紫乃ちゃんまで焦ってる。
笑美・・・
って、笑美は今いないんだった。
こんな時、笑美がいてくれたら……
「ヤッホ~お兄ちゃん・・・って優人くん!?」
きた・・・!
「笑美ちゃん、どうしょう・・・優人が・・・」
「紫乃ちゃん、落ちついて。
優人の着替えを取ってきてくれる?
優人くん、怖かったね。もう大丈夫だよ。
我慢しないで、全部吐いていいからね」
紫乃ちゃんに着替えを持ってくるよう促し、優人の背中を撫でながら優しく声をかける笑美。
もう、看護師のような対応でびっくりした。
オレは自分のことで精一杯だったけど、笑美はずっとあんな風に向き合ってくれてたんだな。

