君との距離

そして、今に至る。

卒業まで、あと1ヶ月もない。

彼女とは案の定、話す機会などなかった。
それに彼女は見違えるように明るくなった。仲の良い子と同じクラスになったのだろう。ワイワイ騒いで元気そうだ。
よかった...やっぱり彼女には笑顔が似合う。
僕の隣にいるなんかよりずっと。
よかった。これ以上深い仲にならなくて。
なれなくて。
あれ?少し、切なくなったのはなぜだろう。



受験生ということもあり、三年生はやたら他クラスとの交流が少ない。
という訳で彼女と話すどころか会う機会さえもない。
思えば当たり前のことなのに。
今まで女子と話したことなんて数えるほどしかないくせに。
何を期待しているのだろう。
ほんとう、馬鹿だな。僕は。彼女に関わってからは自分が自分じゃないみたいだ。
ろくな事がない。いつも上の空で、気づけば彼女のことばかり考えてしまってる。
変態なのだろうか。いや、違う。僕は純粋な...
そう、恋だ。
そんなのとっくに気づいていたのに。
認めたくなかった。心に決めてる自分のルールを彼女がいっつも破っていく。
僕の歯車は狂いっぱなしだ。彼女のせいで。
でも、そんなこと彼女が知るはずもない。知るよしもない。
自分の気持ちを彼女のせいにして、彼女のことばっかり考えている僕はやっぱり最低な男なのかも知れない。
本当にごめん。自分で嫌になるよ...

そんな彼女とは廊下ですれ違うが、話しかける勇気などない。
彼女の教室になど行ける度胸など残念ながら備われておらず、一日、また一日。
一緒の服を着れる時間が減っていく。
正直、早く終わって欲しい。
離れるのは辛いけど、それは僕の勝手なエゴで彼女に迷惑だ。
それに、人間なんて忘れっぽい生き物だ。
しばらくもすれば彼女の事なんてきれいさっぱり忘れてしまうだろう。
――勇気を出したら話せる、手が届く距離。
今、この状態が酷くしんどくて、苦しい。自分が嫌になる。
なんで僕はこうなんだろう。
ため息をついた息が白色に変わった二月…
そういや、あのバレンタインの日からちょうど1年が経っていた。