君との距離

中学二年生の時、何回席替えしてもいつも近所になる女子がいた。
なんというか、地味な人。
いっつも本ばっか読んでいて、1人。

ーこの人知ってる知ってる。
小学校も同じだったはずなんだけど、こんなんじゃなかった。
もっと明るくワイワイしているイメージだったのに。
今じゃ『 私には関わらないでください』って一線置いているような感じ。
中学デビューってヤツ?あ、逆デビューか。
僕もどちらかというと人と関わるのは苦手な方なので、気は合いそうだなとは思ったかな。
まぁ、どうせ僕は人...ましてや女子と話す気なんて全くないし、話したいとも思わないので関わることはないと思うけどね。

実際、きっと彼女とは気が合った。
彼女の読んでいる本は僕の好きな作家さんだったり、ふと後ろを向いた時に見えた彼女とテストの点が同じだったり。

話してみたいな、とは思ったけど彼女のなんて言うかな...独特な雰囲気におされて話すことなんてできなかった。
あ、僕に勇気がないだけか…

そんなこんなでもう二月、中二という青春もあと1ヶ月。
僕には全く関係がない。
しかも今日はバレンタインだ。女子が朝からきゃっきゃきゃっきゃ騒いでる。
うるさいな...目障りだな、外でやれよ。と心の奥で舌打ちをした。きっとこういうところが僕のモテない理由なんだろうな。
勝手に1人納得して切なくなる。
やめよ辞めよ。哀しい想像を振り払って、僕は横目に隣の席を見た。

つい先日、二年生最後の席替えをした。
隣の席は...最悪、女子。
うちのクラスは女子が何故か少なく、今まで運良く男子の隣ばっかりだった。
最後の最後に女子。ここまで来たら男子で締めくくって欲しかったな、と思い隣の人の名前を見るとー・・・
彼女だった。

彼女こと花島刹那。
僕の青春はたったの1ヶ月。でもその代わりとても濃い1ヶ月。
それが今、始まったんだ...