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「じゃあ、元気でな。」



パパは玄関で靴を履き、フッと力無く笑う。

「パパも元気でね…。」

私はもうパパの前で無理に笑顔を作るのはやめた。

辛い時は笑わなくていい。

そんな事をしなくても、パパは私を愛してくれているってわかったから…。

今からニューヨークに戻るパパを大賀見と一緒に見送る。

おじ様は来た時と同様、空港までパパを送ってから、そのまま病院へ出勤するらしい。

私も空港まで見送るって言ったんだけど、パパは「連れて行きたくなっちゃうから」と断った。

「…ぁあ、本当に連れて行きたい。葵とこれ以上、離れるのは辛いよ。」

パパは私をぎゅっと抱きしめる。

「私も寂しいよ…。でも決めた事だから、ね?パパもそうでしょ?」

「…そうだね。」

パパはしょんぼりとしながら私から離れた。

そして、大賀見の方を見て

「春斗くん、葵に手を出したらすぐに葵を連れてニューヨークへ行くからねっ。」

「っ⁉︎、パパッ///」

な、なんてことを言いだすんだっ、この人はっ///

大賀見は何も言わずニッコリと爽やかな極上の笑みを見せていた。

「な、なんだ?その笑顔はっ?怪し「はいはい、暁人、急がないと間に合わないよ。」」

おじ様がパパの背中をニコニコと押しながら玄関を出て行く。

「葵っ、あおぃぃぃ……」

パパの声がフェードアウトしていき、カチャッと玄関の扉が閉まった。

しーん…と静まり返った玄関。

寂しさが一気に押し寄せてくる。

「ばーか、泣いてんなよ。」

大賀見が私の頭を腕の中に引き寄せポンポンとした。

「泣いてないよっ///」

うそ…本当は今にも涙が溢れそうになっている。

「ぷっ…また、強がってんのかよ。」

「強がってません。」

「ふっ…可愛くねぇヤツ。」

「どーせ、可愛くないですよー、私はっ。」

泣きそうになるのを我慢していると、大賀見は私の両肩に手を当て、私の顔をじっと見つめて

「うそ。メチャ可愛い。」

なんて言うから、私の心臓はドクンッと大きく跳ね上がる。

この人…本当に心臓に悪い///

これ以上、ドキドキさせないでよね///