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バタン……

少し重たい扉が音を立てて閉まった。

大賀見に手を引かれて連れて来られた場所は、いつもお弁当を食べている屋上。

「話って…なに?」

私は風になびく長い髪を押さえながら質問する。

「今朝の話なんだけどよ…。」

めずらしく眉を下げて少し不安そうな表情の大賀見。

「……うん?」

「お前、親父がニューヨークで一緒に住もうって言ったらどーすんの?」

「……え?」

パパと一緒にニューヨーク………?

「俺はお前の親父が、娘をひとり日本に残して行くとは思えない。」

ーーーそんなこと、全く考えてなかった。

私は大賀見と一緒に、皆んなと一緒にいれると思って……

もちろん、パパの事は大好きで出来たら一緒に住みたいとも思ってる。

でも…パパと美咲さんとの新婚生活を邪魔したくない。

なにより、大賀見の傍を離れたくないよっ。

そんなこと言ったら迷惑かな?

「……私。」

下にあった視線を上にあげ大賀見を見つめると、ふわぁっと温かい大きな物に包まれる。

「お前…ずっと俺の傍にいろよ。俺から離れんな。」

ぎゅっと私を抱きしめる大賀見。

いいの?

迷惑じゃない?邪魔にならない?

大賀見の傍にずっといていいの?

「……いいの?私ってどこに行っても邪魔者なんだよ?」

そう…親戚からも邪魔者にされて、今度はパパと美咲さんの邪魔者になってる私だよ?

「馬鹿………、お前が邪魔者なわけねぇだろ。お前にずっと傍にいて欲しいんだ……。
俺にはお前が必要なんだよ。」

大賀見の言葉が私の心に深く突き刺さる。

ママが居なくなってから、そんなこと言ってもらった事が無かった。

目頭が熱くなって止めどなく涙が溢れてくる。

「ありがとう…私…ずっと、大賀見の傍にいるよ。」

私もぎゅっと力を入れて大賀見を抱きしめる。

嬉しいっ。

幸せすぎて怖いくらいだよ…………。