金曜日の朝…
♪♪♪〜♪〜♪〜
枕元で私のスマホがなった。
まだ少しボーとした頭で青く光る画面を見る。
…………え?
「…もしもし、パパ?」
ニューヨークにいるパパからの突然の電話だった。
「おはよう、葵。朝早くにゴメンな。」
「ううん、もう起きる時間だったから大丈夫。それより、どうしたの?突然電話だなんて。」
「仕事が少し落ち着いたから、明日、日本へ一度帰るよ。本社に寄ってから、そっちに行くから……えーと、夕方くらいになるかな?
ゴメンな、急に決めてしまって…。」
「ううん、お仕事の都合もあるだろうから。じゃあ…明日、大賀見のおじ様のお家で待ってるね。」
「了解。それじゃ、明日。」
そう言ってパパは電話を切った。
パパに会えると思うと、とても嬉しくてテンションが上がる。
でも、その反面…例の返事をするのだと思うと少し気が重たい。
もう、心は決まってるのにね…。
私はベッドから降りて制服に着替え、キッチンへと向かった。
さぁ、気を取り直してご飯の準備だっ。
今日の朝ご飯は何にしようかな?
昨夜はおじ様が帰って来てないから、大賀見と二人かぁ……
よしっ、洋食にしよう。
私はビシソワーズとクロワッサンサンドを作った。
大賀見って意外にクリーム系のスープが好きなんだよね。
あと、ハンバーグに唐揚げ、オムレツも好きみたいだったな。
子供が好きそうな物が好きだけど、甘い物は苦手なんだよね。
ふふ…普段はクールな人だから、このギャップがなんだか可愛いんだよね。
「なに、ニヤニヤひとりで笑ってんだよ。」
気が付けば大賀見がキッチンを覗いていた。
「っっ⁉︎ビックリするじゃんっ///」
私は見られていた事が恥ずかしくて、すぐに視線を逸らし料理に集中するフリをする。
「ふーん…そんな態度?」
「きゃっ、ちょっと大賀見///」
大賀見が私の後ろにサッとまわって、覆いかぶさるように抱きしめてきた。
「重いよっ///」
「耐えろよ。」
「じゃ、邪魔しないで///」
「…生意気。」
かぷっ…
「ひゃっ///」
私は耳たぶを甘噛みされ、変な声が出てしまった。
「お前って…耳弱いよな。」
分かってるなら、噛んだり耳元で囁いたりしないでよっ///
「べ、別にっ。」
悔しいから強がってみたけど、それが裏目に出たみたいで…
クルッと強引に体を回転させられ…
「んっ…あ……っ…ん…」
朝から濃厚なキスをされた。
「ん?まだ物足りないって?」
意地悪そうにペロリと唇を舐めながら笑う大賀見。
「だ、大丈夫ですっ///」
これ以上続くと、立っていられなくなっちゃうよ。
「毎日、特訓だって言っただろ?」
そう言っから、大賀見は真っ赤になった私の顔を見て満足したのかキッチンを出て行った。
もうっ。
大賀見がこんなに甘々な人だとは思って無かったよ///
意地悪なところは変わらないけど…。
私ばかりがドキドキさせられてさ。
なんかズルイよ///
◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は子ブタを朝からからかって、満足気に席に座る。
普段、強気なアイツが俺の事で赤面する姿がたまんねぇ…
つい、苛めたくなるんだよな。
しばらくすると、テーブルの上に朝食が並べられた。
俺の向かい側に子ブタが座ってから、二人で食べ始めるのが日課になった。
「…うまい。」
「へへ…ありがとう///」
コイツって本当に何作らせても美味いよな。
俺って胃袋を完全に掴まれてる?
「あのさ、今朝パパから電話があったの。」
何でも無い事のようにサラッと言った子ブタ。
それって…親父が日本に帰ってくる連絡じゃねぇのか?
「…へぇ、なんて?」
平静を装って聞いてみる。
「…明日のお昼くらいに帰って来るんだって。」
子ブタはスープを飲みながら、普通のテンションで返事をした。
は?
なんでそんな平然としてんだよっ。
「お前、親父が帰って来るってどういう事か分かってんの?」
「パパの結婚の件で返事をするって事でしょ?」
「馬鹿かお前はっ。それだけじゃねぇだろっ!」
俺は事の重大さを分かってない子ブタにイラっとした。
「どうして怒るのよっ。」
「お前が馬鹿だからだろ。この大馬鹿女っ。」
俺は食事をとるのをやめ席を立つ。
「ちょっと大賀見、どこ行くのよ。」
「学校に決まってんだろ。」
「ご飯は?まだ途中でしょっ。」
「もぅ、いらねぇよ。」
俺は泣きそうになっている子ブタを残して、サッサと家を出た。
酷い事を言っているのは分かってる。
でも、不安なんだよ。
絶対、あの親父はお前をニューヨークへ連れて行っちまう。
俺にお前を引き止めることはできるのか?